自分の感情を切り絵に込めて表現する
切り絵職人「浅葱倫子」

今回のインタビューは切り絵職人の浅葱倫子(あさぎみちこ)さん。

たまたま立ち寄ったイベントで、切り絵のワークショップと作品の販売をしていました。

絵のタッチと紙一枚で表現する切り絵の素晴らしさに感銘を覚えて、ついつい声をかけさせてもらっちゃいました。

 

自分の絵が好きになれず、絵を描かない時期があった
今は感情表現の一つとして、作品を作っている

切り絵を知って、やり始めたきっかけを質問したところ、次のように答えてくれました。

「小学生の頃、たまたま観ていたテレビでやっていたのが、切り絵を知ったきっかけです。

『紙一枚でこんなことができるんだ』という驚きがあったのを今でも覚えています。」

 

実際に切り絵をやり始めたのは、高校2年生になってからだと浅葱さんは言います。

「小さい頃から絵を描くのは好きだったんですが、自分の絵は好きではありませんでした。

今でも割とそうで、人の絵を見ると、『なんで自分の絵はこんな風にならないんだろう』と思うことはよくあります。

だから、小学生6年生くらいから高校2年生までの約5年間はほとんど絵を描くことはありませんでした。」

 

▲切り絵職人 浅葱倫子(あさぎみちこ)。新潟市在住。独学で切り絵を学び、現在はイベントに出店したり、注文をもらってお客様の要望にあった作品を提供している。

 

「今ではだいぶ良くなりましたが、以前は感情を表に出すのが本当に苦手でした。

周囲の人たちからも『自分の感情をそのまま表現するのが苦手だったら、何か別の手法で表現できるものをやってみたらいいよ』というアドバイスももらっていました。

そんな中で出会ったのが切り絵でした。

切り絵は私にとって表現方法の一つとなっています。」

と浅葱さんは話をしてくれました。

 

「今でも自分の絵は手放しで好きとは言えません。

周りの人が『いいね』っていいてくれるのは嬉しいんですけど、どこかで『なんで私が描く絵はこんななんだろう』と残念に思うことはまだあります。

でも、今は『もういいや』って開き直って、描きたい絵を描いています。」

 

インタビューの時、こんなことを言っていましたが、この絵のタッチだったから私が興味を持って「インタビューしたい!」と思ったんだと思っています。

「そんなに謙遜しないで、もっと自信を持てばいいのに・・・」とおじさんは思ってしまいました。

 

 

切り絵の魅力は1枚の絵の中にストーリーを作ることができること

「下絵を描く段階で、物語というかメッセージ性を入れるようにしています。

例えば、この人魚姫の作品(下図参照)。

人魚姫は、自分の声を失って、足を手に入れるという物語。

尾びれがあるうちは、ピアノの鍵盤やハーブがあったり、音符やトーン記号をがあります。

でも、貝殻の外に出ると、不気味なハートがあったり、ハートから足が伸びていたりしていて、ハッピーエンドじゃないっていうストーリーを表現しています。」と、人魚姫の作品について説明してくれました。

 

イベントで作品を目にしたとき、ただ単純に「すごいなー」と思っていた作品にも、こんなことを考えながら作っていたのかと思ってしまいました。

 

▲人魚姫

 

 

「あるとき、星座を作品にしたいと思って12星座を作ったこともありました。

例えば『羊』。

羊は『寝るときに数える動物』とか『柵を飛び越える』というイメージがあるので、それを絵に描いて切りました。

今回、12星座のうち羊しか持ってきませんでしたが、12星座すべての作品があります。」

 

すでにある物語を切り絵にするとき、その題材については深く調べることはしないと浅葱さんは言います。

 

「私にとって、物語について知っていることがそのまま作品のイメージになります。

大切なのは調べて新しく知ったものではなくて、私の中でその物語がどういうイメージで残っているかです。

物語の背景を調べるのではなくて、そのイメージと描いているもの、例えば人魚姫だったら音符とかを描くようにしています。」

 

職人、そしてクリエイターとして、意識していることを教えてくれました。

「私にも絵心があって、手先が器用だったらやってみたいのに」とインタビューしながら自分の才能の無さを残念に思ったのでした・・・

 

 

複数枚の絵をつなぎ合わせるのではなく、1枚にまとめる
それが作品を作るときのこだわり

「絵を描くとき、こっち側に人間、反対側に花があったとき、それぞれを別に作って1つの額に入れても作品は出来上がるんですが、私の場合はすべてが1枚でつながるようにしています。

絵を描いていて『つながっていない』と思ったら、間に何かを足して、つながる絵になるようにしています。

見ている人はあまり気にしていないと思いますが、その部分がこだわりですね。」

と、作品を作る上でのこだわりを教えてもらいました。

 

▲チョウチョ

 

「あと、下絵を描くとき、この部分は細かくいっぱい書き込みたいと思ったとき、切り絵にするときは大変そうだと思っても描くようにしています。

細かい作業のため、ちょっとしたことで破れてしまうこともあって大変なんですけどね。

変なところで破れてしまったら、最初の方であればデザインを変更するときもあるんですが、最後の方で破れてしまうと『あぁ・・・』と途方にくれることもあります。」

 

確かに絵の中に細かい模様がある作品もたくさんありました。

感性で描いているのはわかりましたが、描いて切っての作業は大変そうでもあります。

でも、それでも作品を仕上げてしまうところが職人的なところなんだと思ってしまいました。

 

 

切り絵をやっていてよかったと思うのは、やっぱり私の作品を見て「いいね」と言ってもらえたとき

「切り絵をやっていてよかったと思うときは、イベントに来てくれた方に「いいね」と言ってもらったときですね。

以前、イベントに来てくれた小学生がいて、その子が『(切り絵を)やりたい』と言ってくれました。

その子が好きな絵を描こうと思って話を聞いたら、飼っている猫が好きでその猫の名前や姿などを聞いて、絵を描いてあげました。

そしてその子にはその場で体験として絵を切ってもらいました。

その子は自分で切った切り絵を、すごく喜んで持って帰ってくれました。

やっぱりお客様に喜んでもらえた時が一番嬉しいですね。」

 

 

「先日、親戚の結婚式があって、新郎新婦に切り絵をプレゼントしました。

そのときは新郎新婦からオーダーをもらったわけではないので、私がイメージしたものを切り絵にしてプレゼントしましたよ。

絵のタッチは暗くならないように注意しました。

私は結婚式には参加しませんでしたが、後日連絡がきてすごく喜んでくれました。

そのときは嬉しかったですね。」

 

「この写真を見て、イメージしたものを切り絵にしてください」とお願いしても作品を作ってくれるとのこと。

彼女の作品が気にいった方は、「写真を見てイメージしたもの」を作ってもらってもおもしろいのではないでしょうか。

 

 

辛いのは描きたい絵の表現が広がらないとき
そんなときは1つ1つのパーツからイメージを膨らませる

作品を作る上で、どんなときに苦労するかをうかがいました。

 

「イメージが膨らまないときは苦労しますね。

これは喋れない自分の中の苦しさを表現しようと思って作った作品です。(下図参照)

『喋れない=口がない人だ』と思ったところでつっかえてしまいました。

目を描いて、鼻を描いて、口がない絵を描いて、蛇をモチーフにすることはあるので髪の毛を蛇にしたんですが、そこからがまったく出てきませんでした。

『喋れない人は、喋らないんではなくて、何かがあって喋れないんだよ』っていうことを表現したくて、

『口から縫い付けられた跡がある』

『ジッパーがあるので開けようと思えば開けられる』

というところを表現したかったんです。

でも、それができていない人を表現したくて、『貝殻があるが、言葉に出せなくて貝殻が出てくる』ものを足したりしました。

喋れないということから、1つ1つのパーツを見ながらイメージを膨らませるようにしています。」

 

「これを見てもらった際に、『ドクロっぽく見える』と言ってくれる人がいました。

苦しさが出ていることを表現できて、その思いた伝わったのは嬉しかったですね。

作品の思い入れはどれもあるはあるんですが、自分の思いがなんとなく伝わったときは嬉しかったですね。

辛いときの作品はそのときのことを思い出されます。」

 

一見不気味に見える作品の中に、表現したいストーリー、伝えたいメッセージがあることがとても伝わってきました。

作家としてものづくりの大変さを教えてくれた浅葱さん。

これからもドンドン作品を作ってくれるのを期待します。

 

 

 

自分を表現する方法を見つけることができた
今まで私に関わってくれた人に恩返しがしたい

今後どんなものを作ってみたいか質問したところ、次のように答えてくれました。

 

「今までは1枚で完結するような絵を作っていましたが、今後は何枚かをつなげてストーリー性を出したいです。

色は全部モノトーンカラーで。

紙芝居みたいなイメージです。」

 

「今まで表現の仕方が下手だったので、今は表現方法を見つけることができてとても嬉しいしありがたいと思っています。

今まで私に関わってくれた方々に、何かで恩返しができるようになりたいです。」

 

どこかのイベントスペースやカフェなどで個展を開いたらおもしろそう。

イベントスペースやカフェを経営している方で、浅葱さんの切り絵に興味がある方がいたら、連絡をしてみていかがですか?

きっとおもしろい空間が広がると思いますよ。

 

▲12星座「ヒツジ」

 

インタビューしたときは、まだ19歳。

初めて会ったときも若いって思いましたが、改めて「めっちゃ若いじゃん!」って思ってしまいました。

そんなに若いのに、自分の形と技術を持っているのは、すごいの一言。

もっともっと自分を表現できるように努力してほしいとおじさんは思います。

 

▲ヘビの髪。のちに缶バッジにはいることになった作品で、いつも身分証明のようにイベントに必ず持っていっている。

 

現在は、イベントに出店するのと、オーダーをいただいてから作品を作っているだけですが、切り絵に興味がある人がいたら、ワークショップもやっていきたいとのことでした。

 

Facebookをやっているとのことなので、Facebookからお問い合わせください。

 

ここから彼女の作品も見ることができますよ。

 

 

 

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山後マサキ

1980年5月生まれ。新潟県出身。
サラリーマン時代、システムエンジニアとしてシステム導入やサポートのため全国を飛び回る。
現在は「新潟発!地方発!カッコいい自分になろう!」をコンセプトに活動中。