チタンの新しい可能性を見出したい
レジエ株式会社「浅野良裕」

今回はレジエ株式会社の浅野良裕常務にインタビューさせていただきました。

レジエ株式会社は、チタンアクセサリーを作っている会社です。

恥ずかしながら、インタビューをさせていただくまでチタンの特性などはまったく知りませんでした。

でも、お話をうかがいながら、浅野さんのこだわりに触れることができました。

 

 

チタンを使った商品の最初はゴルフクラブ
試行錯誤を繰り返し、アクセサリーにたどり着いた

「チタン製のアクセサリー・雑貨の企画・製造・販売をやっています。

自社で製造したアクセサリーは、デパートや燕三条駅、小売店、カタログ通販などで販売しています。

 

チタンは人工関節に使われていたり、歯のインプラントにも使われるくらい、生体適合性が高い金属です。

体に害がない金属なんです。

それをアクセサリーに使えば、当然金属アレルギーの方も発症を起こしにくいということで、アクセサリーを作っています。」

 

 

▲レジエ株式会社 浅野良裕常務。チタンを使ったアクセサリーや雑貨の企画・製造・販売を行っています。

 

生体適合性がいいとはいえ、チタンでアクセサリーを作るに至った経緯がまったくわからない。

ということで、浅野さんにチタンでアクセサリーを作るに至った経緯を教えていただきました。

 

「社長は以前、ステンレスの会社に勤めていました。

そこの会社を退職したとき、知見を広めるために、全国各地のいろいろなところを訪問していました。

その中の一つに種子島宇宙開発センターがあり、そこでチタンに出会ったそうなんです。

その場所で、『これからはチタンだ』と思ったらしく、本当は他にも行くところはあったんですが、全部キャンセルして、すぐ新潟に帰ってきてチタンの研究に没頭したそうです。

当時、社長が働いていたステンレスの会社もこの辺の地場では先駆けてステンレスの加工をやっていたんですが、『ステンレスの次は必ずチタンが来る!』と思って加工を本格的に始めました。

 

最初、チタンを使って何をやろうかと思ったそうなんですが、最初にやったのはゴルフクラブでした。

1997〜1998年頃、チタンで作られたゴルフクラブは世の中に少なく、ゴルフの全国紙『パーゴルフ』などで当社が取り上げられたりして、非常に注目を集めました。

普通、ゴルフクラブのようなものは、大資本、大人数、大設備の企業が一般的ですが、それらの企業に対して技術で対抗していたのは当社の自慢です。

ただ、技術は進むものなので、有名なところがゴルフクラブを当社と同じような価格、もしくは安い価格で出してきて、売り上げが伸び悩んでしまいました。」

 

今は当たり前のように使われているチタン製のゴルフクラブは、レジエさんでも作られていたんですね。

少人数・小規模の工場で、大人数・大規模の大手メーカーと同じレベルのものが作られていることにびっくりしました。

 

「ゴルフクラブの製造をやっているのと同時に、いろいろなことにも挑戦していました。

例えば、メガネのフレームを作ったり、東京大学のチームと組んで人工関節を作ったりもしていました。

しかし、人工関節を作る場合、様々な面で非常にリスクが高く、医療業界へは参入しませんでした。

今でもそうなんですが、人工関節を作っているところは超大手ばかり。

そういうところであれば何か不調があっても対応できるかもしれませんが、当社のようなところは、お客様1人に何か問題があったときに対応できないので、手を出さないでおこうと思いました。」

 

「最初からアクセサリーを作ってはいませんでした。

福井県鯖江市にあるメーカーからメガネフレームの試作を依頼されたとき、鋳造では精度が出ませんでした。

例えば、フレームのヒンジ部分のネジ穴などです。

『じゃあ、どうしたもんか』ということで考えたところ、持っていった会社の方から社長に『生体適合性が高いからアクセサリーにしたらいいんじゃない?』『金属アレルギーで困っている人がいるから、いいんじゃないか』ということで本格的にアクセサリーを始めました。

 

うちのチタン鋳造という『型に流し込む』方法でこれだけの品種を作っている会社は、日本全国探しても当社しかありません。

いろいろなデザインが作れるということで、お客様が望んだものを作れると信じています。

このチタン鋳造する機械は1997年、今から20年前に自社で独自開発を行いました。」

 

初めからアクセサリーをやってはなかったんですね。

いろいろ試しながらではありますが、今から20年も前に独自にチタン鋳造の機械を開発してしまうところは、こだわりというか、チタンを使って会社を経営するという覚悟について話していただいたように思います。

 

 

チタンは扱い始めてからの歴史が短いから
何をやるにしても手探りなのが大変

「チタンの長所・魅力は、、、

・生体適合性が高い

・非常に軽い

・錆びにくい

・硬いので変形しにくい

というところです。

 

生体適合性が高いというのは、先ほど人工関節や歯で使われているという説明をさせていただきました。

 

チタンは金、銀、プラチナなどと比べると1/4くらいの重さしかありません。

シニアの方になってくると、金などで作られたアクセサリーが重く感じるようになる方もいらっしゃるので、そのような方にはチタンの軽さは喜ばれます。

 

また、シルバーだと温泉に行くとすぐに色が変わってしまったり、海に行くと錆びたりするんですが、チタンはそのようなことはありません。

なので、温泉や海でも、アクセサリーをしたまま気兼ねなく入ることができます。

 

最後に、硬くて変形しにくいので、結婚指輪などにも向いています。

長年結婚指輪をされている方は、楕円になってしまって抜けなくなってしまう方もいます。

でも、チタンは硬い金属なので、他の金属に比べて変形する心配はありません。

このようなところがチタンの長所です。

 

逆に、硬いことが短所でもあります。

硬い金属なので、加工しにくいという特徴があります。

研磨しにくい、研磨する道具も磨耗してダメになりやすいです。」

 

 

▲研磨の風景。チタンは硬くて光沢も出にくい金属なので、研磨には細心の注意を払っています。

 

「あと、全国で鋳造からチタンアクセサリーを作っているところがないので、ノウハウがないのが最大のデメリットです。

何をやるにしても、手探りでやっている状態です。

金・銀・プラチナであれば、宝飾系の学校があったりするじゃないですか?

そのくらいノウハウが蓄積されているんですけど、チタンではそれがありません。

実は、チタン自体使われ始めて50〜60年くらいなんです。

だから、まだまだノウハウは確立されてないんです。」

 

職人の町燕三条の職人を持ってしても、扱いが難しい金属「チタン」。

すべてが手探りであれば、何をやるにしても、時間も労力もかかってしまいます。

でも、金属アレルギーの方が使っても大丈夫だったり、軽い金属だからシニアの人に喜ばれるものであれば、手探りかもしれませんが、どんどん技術やノウハウを蓄積していってもらって、どんどんいい商品を作ってもらいたいと思います。

 

 

人の考えを否定しないことが
新しいデザインにつながる

「アクセサリーはデザインが重要です。

数学と違って『1+1=2』というような答えがありません。

だから、『このデザインいいよね』という方に対して、『いやいや、こっちの方がいいよ』ということは言わないようにしています。

そもそも、お客様がいいと思ったものをポジティブに考えていると、いいものが生まれると思っています。」

 

 

▲チタンの指輪。硬い金属なので、普段使いをしていても変形する心配がありません。

 

「当社で考えて『これはイケる』って思って売り出した商品が売れなかったり、『これってどうだろう』って思った

商品が売れたりするので、何がヒットするのかは正直わかりません。

なので、自分たちの中だけで決めてしまうのはよくないと思っています。
消費者の意見と作り手の意見が一致するとは限らないので、なるべくいろいろな意見を取り入れてデザインを考えるようにしています。

アクセサリーは多品種少量が一般的で、好みも人それぞれ違うので、難しいと思うことが多いです。」

 

確かに、デザインは算数のように明確な答えがありません。

だからこそおもしろくもあり、大変なんだと思います。

 

 

▲ナンバー0〜9。自社で鋳造できるため、様々な形を作れるのが強み。

 

「いいものを作るのは当然なんですが、お客様の手元に届いたときに、想像以上のものを届けたいと思ってアクセサリーを作っています。

『これすごくいい』って思ってもらえるような驚きを与えられるようなものを常に作りたいと思っています。

 

といっても、アレルギーの方は、アクセサリーをつけたことがない方もたくさんいます。

そのような方は、いきなり凝ったデザインよりも、シンプルなものの方を好みます。

チタンはなかなか光沢が出にくい金属なので、色味としては落ち着いたものになるのが特徴です。

なので、シンプルなものも揃えていきたいと思っています。」

 

金属アレルギーの人はアクセサリーをつけたことがない。

確かにその通りだと思います。

私は金属アレルギーではないですが、普段アクセサリーをしないので、もし買うとなったらシンプルなものを買いそうな気がします。

様々なデザインも、自社で持っている鋳造の機械があるからできること。

これからも、かっこいい、かわいいデザインのチタンアクセサリーを作ってもらいたいと思います。

 

 

家族中心で経営している会社だからこその苦労がある

「当社は社員は家族が半分なので、社内の人間関係で苦労しているところがあります。

社長が父で、専務が母で、姉も働いているのですが、家族ということもあって、どうしても言葉が乱暴になったり言葉足らずになってしまいます。

コミュニケーションがうまく取れずに、本来なら「もっとうまくできるはずなのに」と思ってしまうことがありますね。」

 

小さな会社ならではの悩みのように聞こえますが、集団の最小単位は家族。

是非とも円滑なコミュニケーションをとって、活気ある会社にしてもらいたいと思います。

 

▲ピルケース。軽い、湿気に強い、金属臭がないという特徴があります。

 

「あとは、製造についてです。

何度もお話しさせていただいている通り、チタンの鋳造はノウハウがないので教科書がありません。

なので、毎日手探りでやっています。

作っていく中で、どうしても不良が出てしまいます。

不良を減らすために日々試行錯誤を繰り返しているのですが、あるときにうまくいっていた方法と同じことをやっていても、すごく悪くなったりします。

チタンはそういった意味で、すごく難しい金属です。

社長はステンレスの鋳造はやっていたので、鋳造においてノウハウがあるはずなのですが、その社長を持ってしてもうまくいかないことはしばしばです。」

 

「他の金属であれば大気中で溶かすことができるんですが、チタンは大気中で溶かすと酸素と結合してもろくなってしまう性質があります。

それを防ぐために、真空中で作業しなければなりません。

それをやるためには設備もしっかりしたものを整えなければならないし、大変になってしまいます。

シールドガス(アルゴンガス)を充満させた中でやる工程もあるんですけど、金属の中にガスに混ざったりして、磨いていると、穴が出てきたりします。

そういう不良を少しでも減らせるようにしたいと思って、日々試行錯誤しています。」

 

今日のインタビュー、高校時代に聞いた元素がいくつも散りばめられている気がします。

教科書の中だけの世界だと思っていましたが、実際に製品を作るのに使われているんですね。

とても勉強になりました。

 

 

▲るつぼに残ったチタンで「スカル」と呼ばれています。

 

「人間関係を良くするため、あとは会社の経営のヒントになるかもということで、異業種交流会に参加しています。

その中では家族で経営している方も多く、どこも一緒だということがわかりました。

テーエムの渡辺社長やヤマトキ製作所の小林常務もいらっしゃるので、よく相談に乗ってもらっています。

特にテーエムさんは構成が似てるので、参考にさせていただいているところが多いです。

テーエムさんは社員の若返りもできているので、これからも参考にさせていただきたいと思っています。

人を変えるのは難しいということは、たくさんの先輩方からアドバイスをいただきます。

なので、人を変えようとするのではなく、まずは自分が変わっていくことを意識していこうと思います。」

 

以前インタビューさせていただいたテーエムさんは、社員の若返りにも成功したし、活気のある職場だったので、非常に参考になる会社だと思います。

活気ある職場づくり、頑張ってください!

 

 

▲作業途中の風景。ゴム型から取り出したワックスをつけていきます。

 

「毎年、三条市で『工場の祭典』というイベントが開かれるんですが、そこに大学の教授が来たりとか、日本チタン協会の方が見せてくれって来たりします。

それくらい、ノウハウが確立されていないものなんです。

先ほども言いましたが、チタンは扱い始めてからまだ50〜60年しか経っていないので、大学などの学問的なところと、当社のような産業分野が同時に研究を進めている金属です。

だから、まだまだ試行錯誤しなければならないと考えています。」

 

それにしても大学側から「見せてくれ」って言ってくるのってすごいと思います。

さすが職人の町。

レジエさんには、大学よりもずっと先の知識や技術をつけていってほしいと思います。

 

 

アクセサリーを通じて人とのつながりができるのが楽しい

「きれいに磨けたときは楽しいと感じます。

アクセサリーは細かい凹凸が多いので、技術が必要になります。

それをきれいに磨けたときは、『やった』っていう達成感がありますね。

 

あとは、売りに行ったときに、お客様とフェイスtoフェイスでお話するんですが、そのときに『このデザインいいわね』とか『形がすごくいい』と言ってもらえるときは嬉しいですね。

金属アレルギーの方もいますし、アレルギーはないと思うんですがデザインを気に入ってくれる方もいますし、軽いからいいと言ってくださる方もいます。

接客商売はしたことがなかったので、最初の頃は戸惑いましたが、今はお客様から思いがけない話を聞いたりして楽しいと感じることも増えて来ました。

アクセサリーを見に来てくださった方と話をしたら『私、歯科技工士だよ』っていうこともありましたし、お客様と話をするのは楽しいですね。

 

商品を買ってくださったお客様から、お手紙をいただくことがあります。

自分が商品を買ったときのことを想像しても、それが本当にいいものだったと思っても『いい買い物したな』って思うくらいしか思いませんが、わざわざ便箋を買って、直筆で手紙を書いてくれるのはすごいと思いましたし、とても嬉しかったです。」

 

今のご時世、直筆の手紙を書くことはあまりないので、直筆の手紙は本当に嬉しいと思います。

この手紙を出してくださった方は、きっと本当に感動したんだと思います。

なので、この商品をどんどん発信していってください!

 

 

▲月のペンダント。金属アレルギーの方も安心して身に付けることができます。

 

「男性はゴルフだったり、車やバイクのマフラーだったり、アウトドア用品で使われたりするので、男性の認知度はそこそこあるのですが、女性はあまり『チタン』という金属を知りません。

今はまだチタンの認知度が低いので、もっと広めていきたいと思っています。

 

あ、でも、以前寿司職人の方が工場見学に来られたり、アパレル関係の方が当社のアクセサリーを見にきてくれたこともありました。

アパレル関係の方がチタンに興味をもってくれて、デザインしてもらったりコラボ商品を作ることができると広がるかもしれませんね。」

 

他の金属に比べてチタンアクセサリーは圧倒的に量が少ないので、世の中の多くの人に認知されるには難しいかもしれません。

でも、いいものは必ず広がっていくと信じているので、チタンの普及活動も頑張ってもらいたいと思います。

 

 

チタンの新たな可能性を見出していきたい

「『大新潟まつり』という新潟のものを売りにいくグループがあります。

新潟物産展などに参加するんですが、新潟は知っていても燕三条のことを知っている人はまだまだ少ないと感じています。

チタンを通してもっと燕三条のことを知ってもらえたらいいなと思います。

 

県外の方にもどんどん燕三条に来ていただいて、燕三条の文化や技術に触れてもらうことができたらおもしろいと思います。

今考えているのはチタンで燕三条の鍛治とかと組み合わせてアクセサリーが作れたらと思っています。

もっともっと知ってもらいたいです。

 

商品としては、ちょっと馬鹿な奴を作ってみたいということを仲間内で話すこともあります。

例えば、チタンで下駄、チタンでスケボーなど、『えーーーっ!!』って言われるものを作ってみたいです。

他社にはできないものを作ったらおもしろいかなって思います。

チタンはまだまだやれることがたくさんあるので、一つずつ形にしていければと思っています。」

 

チタンは他の金属に比べ歴史が浅い金属なので、私もインタビューさせていただく中でまだまだ知らない可能性がたくさんあるように感じました。

浅野さんは「まだまだわからないことだらけです」と言ってはいますが、きっとチタンを扱う知識は全国でもトップクラス。

新たな可能性を見つけるために、いろいろな経験を積める環境が整ってほしいと思います。

 

 

▲鋳型にチタンを流し込んでいる風景。レジエ独自の機械を使って真空状態で鋳型にチタンを流し込みます。

 

 

金属アレルギーでお困りの方は
ぜひチタンを試してみてください

最後に浅野さんから次のようなメッセージをいただきました。

 

「金属アレルギーで困っている方がいたら、当社のアクセサリーを試してほしいです。

手紙をくれた方の中にも、他のものは金属アレルギーが出てダメだったが、チタンだったら大丈夫という方もいらっしゃいました。

金属アレルギーで困っている方を少しでも救えればと思っています。」

 

金属アレルギーだけどアクセサリーをつけてオシャレを楽しみたい人。

チタンアクセサリーを試してみるのはいかがでしょうか?

 

レジエさんのチタンアクセサリーは次のところから購入できるそうです。

レジエ株式会社 ホームページ

・TEL:0256-34-9150

・Mail:info@leger.co.jp

レジエ チタンアクセサリー取扱店舗

 

 

取扱店は商品が限られていますが、会社に来てもらえれば全部揃うそうです。

最終的には、連絡がつけば何とかしてくれると言ってくれていたので、ホームページで気になる商品があったら、メールでも電話でもいいので、問い合わせてみてはいかがでしょうか(笑)

 

あと、工場の祭典に来てもらえれば、いろいろな話ができるともおっしゃっていました。

今年は10月5日から8日まで行われているそうです。

職人の技に直に触れてみたい方は、工場の祭典にもお越しください。

工場の祭典

 

工場の祭典期間中、テーエムさんで「奏でる工場」という名の音楽ライブが開催されます。

2016年の「奏でる工場」のメイキング映像はこちら。

 

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山後マサキ

1980年5月生まれ。新潟県出身。
サラリーマン時代、システムエンジニアとしてシステム導入やサポートのため全国を飛び回る。
現在は「新潟発!地方発!カッコいい自分になろう!」をコンセプトに活動中。